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14『夜(よる)の蜘蛛(くも)』
2011년 11월 10일 21시 51분
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작성자: 망향
14 『夜(よる)の蜘蛛(くも)』
―愛知県―
昔、あるところに若い男が住んでいたに。
そろそろ嫁にもらう年頃になっても、いっこうあわてない。村の年寄りたちが若者に聞くとな、
「わしゃぁのん、嫁には注文があるじゃに」
と言う。
「注文いうて、どげな注文ぞん」
「まず、器量(きりょう)がようて、なんにも食べず、よく働く女房がええ」
「馬鹿(ばか)こけや」
年寄りたちはあきれて、もうその話はせんようになったぞん。
ところが、ようしたもんで、二、三日まえから、若者の家に、美しい女がいるようだん。
ある夜に、道に迷ったとか言うて、若者の家に来たまんま居ついてしまったものらしか。
器量はよし、働き者で、物も食べぬちゅう望み通りの女で、若者は有頂天(うちょうてん)の真っ最中であるらしか。
「わけのわからん者もらいくさって、今にろくなこたあねえぞん。ええからほっとけ」
と、年寄りたちはブツクサ言っとったが、若者の方は、知ったこっちゃねぇに。
今日は、女房の里へ顔を出すのだ言うて、女房のあとついて、山道を登って行った。
ずいぶん来たところで、若者は急に腹が痛み出したと。
「もうひと息じゃ、わしの背中におぶさったらええに」
と言うなり、若者を抱き起こし、ヒョイと背中へ乗せてしもうたとな。
腹の痛みも、少しゃ良うなり、女房の背のぬくもりが気持よくて、若者はウトウトしだしたと。
どこやら、暗い山の中を、女房はスタスタ歩いているらしいがのん。
そのうちハッと気がつくと、女房は、若者を草の上に降ろし、自分も一服(いっぷく)しとる様子じゃ。若者が女房をねぎらおうと声を掛けようとしたとき、女房が突然大きな声出して、
「お―い、捕(と)ってきたぞお、みんなこいやぁ」
これを聞いて、若者は驚ろいたもんな。
「さてはこの女、魔性(ましょう)のもんだったかん、えれえことになったぞん」
そこで女房のすきを見て、そばにある菖蒲(しょうぶ)と蓮(はす)の生い茂る草ぼらへ飛び込んで、身を伏せたと。
こわごわのぞいてみると、大きな蛇の姿に変わった女房のまわりへ、大小の蛇が目を輝かせ、ウヨウヨ集まってきたじゃ。 「どうした獲物(えもの)が見えんぞ」
「しまった、うっかりしとって、逃がした」
「どうする」
「今夜、みんなで捕りに行こうや」
これを聞いて若者は、ころげるように山道走って、やっと村へ戻ったと。
若者からわけ聞いた村人たちは、若者の家の前でたき火たきながら、手に手に光物構えて、蛇の襲撃(しゅうげき)を待っとったと。
すると突然、空から大きな蜘蛛(くも)が、若者の前へスルスルと降りてきた。
脚(あし)をひろげ、若者に飛びかかろうとする前に、若者は、そばにあった箒(ほうき)で、蜘蛛をたき火の中へたたき落としたに。
なんとこの大蜘蛛は、数十匹の蛇に変わり、たき火の煙と炎に巻かれて、みんな死んでしまったぞん。
蛇が蜘蛛に化けて、やってきただに。
このことがあってから、
「夜の蜘蛛は親に似ていても、きっと殺せ」
と、言うようになったぞん。
また、この日が五月五日だったので、それ以来、五月五日には、魔性のものを近づけない菖蒲と蓮に葉を、必ず屋根の上に乗せておくと。
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